広島高等裁判所岡山支部 昭和26年(う)32号 判決
刑事訴訟法第三三五条第二項は法律上犯罪の成立を妨げる理由又は刑の加重減免の理由となる事実が主張されたときは、これに対する判断を示さなければならないと規定しているのであるから、同項所定の原由である事実上の主張のあつたときは裁判所はこれに対して判断をしなければならないけれども、必らずしも判決中にその事実上の主張を掲げその当否について判断の理由を説明するの必要はなく、判文上判断を示していることがわかればよいのである。原審第一回公判調書の記載によれば所論の王冠について弁護人は中止未遂犯の主張をしたものとも認められるが、原審の認定した事実によれば、被告人は原判示の日時場所において所論の王冠の外学童服十着をも窃取せんとしたが、その際駅員に発見せられてその目的を果さなかつたというのであるから、原審は被告人の所為を包括的に障礙による未遂の一罪と認定し、それによつて弁護人の中止未遂犯の主張を排斥し、中止未遂犯でないことの判断を示したものというべきである。尤も控訴の理由として一罪の一部である王冠の点についてのみ中止未遂犯の主張をし、学童服の点については障礙未遂犯とすることの当否は別とし、原判決は所論のように弁護人の中止未遂犯の主張に対して判断を遺脱し法令の適用を誤つた違法はない。